わたしの母は薬指にいつも指輪をつけているのであるが、それの出所をわたしは問うことができない。
けれども たぶん 男の人の関係するものではないだろうなあと思う。想像することは、できる。
わたしの母はお風呂に入るときでも、タグネックレスを外さない。それの出所もわたしは問うことができない、もちろん。
そちらについては 男の人が関係するものではない、と残念ながら(残念ながら?)言い切れない。
わたしは物を大事にすることが苦手なので、そんな母が羨ましい。なにしろ母が宗教なのであるし。
わたしも欲しい、肌身離さず持ち歩きたいと思える何か。
手始めに指輪、と思うが、どこで手に入れればよいだろうか。
検索してみても(梅田 スペース 指輪)ペアリングしかヒットしない。
「梅田で、学生でも買える、安いカップルリングの売っている店はありますか。」
馬鹿、そういうのはさ
そういうのは、二人で指輪の売ってそうなところを巡ってさ
ショーケース越しに矯めつ眇めつして値段を見てうへぇって顔をしてさ
そんで 妥協を重ねて 重ねて 重ねて
手の届く範囲で 欲しいものを 二人でさ 選ぶもんなんだぜ。
原始的な大学生でありたかった。
ありたかったよ。
煙草と、麻雀と、酒瓶が不健康に転がるワンルーム。髪の毛がボサボサの男友達と派手な女友達と真面目そうな男友達と女友達。
まあそれは置いといて
みんなはなにか、お風呂に入るときでも外せないような 大事なものってある?
そういう ものが たぶん 自分を あらゆる場面で強くしてくれんじゃないかと
わたしは思うわけなんだけれど
不安になった際に 中指にはまった指輪を 手で確認して
なにしろそいつはわたしが外さない限り常にそこにはまっているので
そういう不変の
なんというか恒常的に側で息をする
ものを
さ
求めてるわけだ。
そうなんや、そういうの求めてるんや。わたし。
へえ。それは必要やね、指輪が。必要やわ、たとえ、10000円しても、必要やわ。
大事にするならね。
大事にできるんか?
今まで なにか ものを 大事にし続けたことはある?
ないぜ。
これから大事にしていきたいけども
今までの なあ〜やっぱり
戦績が、ねえ。
物もお金も愛情も 友情も親しみも繋がりも
なーんにも大事にできないわたしが大事にできるものはなんだ?
自分です、ええ。
それのみです。いっそ清々しいくらいに、それのみです。
そしてその自分が欲しいと思ってんやからきっと必要なのですよ。
恒常的にわたしの側で息をする小さな親しみ深いアクセサリーが。
わたしを強くすると 他でもないわたしが 信じるのだからきっとそうなるでしょう。
仕方ないな、じゃあ…腰を上げるか。大学の図書館でコーヒーを飲んでいるわけだけれども。
雨も止んだしな。
おやすみなさあい