せなか

 

 

 

ノールックで手を伸ばして青いペットボトルを掴む、薄く濁った明度の部屋のなかの空気を吸い込むとこんなに、しみったれているのにどうしてか新鮮な気持ちがした。

果てしなく遠いテレビ台の上の埃にまみれたデジタル時計がいうには8:06へんなの、このひとはケータイの時計だって24時間表示にしていない。シンプルなのが好きなのだそうだ。いちばんに。

男の一人暮らしにしては嫌に肉厚なカーテンが朝の日差しを遮断している。それでもひっそり分け入る光の筋が舞う埃を照らす。音がしない。住宅街、休日の朝。

日曜日に行くマクドナルドが好きだった、みんな13時くらいにようやくのそのそと起き出してきてお腹を満たしに家族で来る、みんなそう、だから店に漂う怠惰さというか人臭さを愛していた。14時になってもぜんぜん空かないプラスチッキーな店内。おもしろい。

裸の胸が丸見えになりながら炭酸の水を飲んだ。万年床だけが安全地帯に思えるこのいつまでも親しくしてくれない部屋で、隣の男の体温はとても高い。背中を向けて静かに眠っている。よく眠る男だ。健やかに。いつでもどこでも。

短く刈られた髪に指を差し入れて頰を背中にぴたりとつける。5分とこうしていられないだろう。もういちど眠る。

 

 

 

 

おわり☆

にっぽんのふけんこう欲望系だんじょ好きです