アフター

 

 

 

夜中の十二時やそれ以降に 改造されたバイクが唸る。

朝はたまに七時から(たぶんなにかに反している)街頭演説が始まる。

酔っ払った人かなにかが大声をあげるのが聞こえる。

そんな場所に私はいま住んでいる。

 

寂しくて仕方ないときに見下ろすと文明がぎらぎらに輝いて忙しなく地面にへばりついてさわさわと移動して、あちらからこちらそちらからあちらへ びゅんびゅんと、いるのが見えるので紛らわすことができる 代わりに静寂を捨てた。

 

決して交わらず、近づけば視線はいっさい合わさらず、でも近くに人間がいる。

集合住宅ってなんて素敵なんでしょう。

挨拶を投げかけても投げかけられても、彼らはぜったいに私の目を見るという不注意、あるいは失礼を犯したりはしないのだ。

 

本質的な寂しさの 数ミリ外側をなでくりなでくりして痛いの痛いの飛んで行けってしてたらやり過ごせちゃうわけです。

 

きょう、久しぶりに酔っ払ったよ。

元恋人が引っ越し祝いと言って置いて行ったお酒を飲んで。

ひとつ飲み干してほろ酔いになったらもっと酔いたくなってもうひとつ飲み干した。

酔っ払うというのは楽しいね。忘れてたな。二日酔いを恐れるあまりに。

 

生活というのは尊いね。ほんとうに。億年先、滅びた私たちの残りかすを他の生命体が発見したなら楽しいやろうな。

どんだけ 利便性追求しててんって思うかな。

商店的な遺跡ありすぎやろって。

お医者さん多すぎて医療機器のこと医療機器てわからんやろな。

あんまりにも住居跡が多すぎて、どんだけ人多かってん!?て思うやろな。一人暮らしってめちゃくちゃ効率悪いから、ひとつの住居にひとりずつ住んでたケースの多さが発見されたらびびるやろな。

でもまあ集合住宅に関してはすごーって思うかもな。それぞれの個室に飯場があってお風呂があってってどんだけ人類ってコミュニケーション嫌いやってん!?て思うかもな。

そうしてそこには私の孤独の欠片ももう残ってはいない。

私がひとりぼっちで過ごした夜の化石なんて風化して判別できなくなってインターネットの彼方。

 

ぜんぶなくなって 崩れていったあとの乾燥した大地をおもう。

素敵。

呼吸をするたびに鼻の奥が痛みそう。

風の音が頬を打つんだろう。ひょっとしたら砂や埃のせいで裸眼ではいられないかもしれない。

干上がった淀川の底を歩きたい。

ひび割れて二度と車なんて通れない道路を注意深く歩こう。

そんな終わりの向こう側で音楽を聴けたら楽しいやろうなあ。

もう二度と新しい音楽が生まれない世界で最後のうちのひとつを選んで。

寒いんやろうか、暑いんやろうか。

 

静寂ってものはもしかしたらとってもいいものなんかもしれへんな。

うるさい道路を気に入ってるなんて頭がいかれてる状態なんかも。

 

今夜の雲の向こうでは星が降っているらしい。

こわ。

実際には終わってるのに光がめちゃくちゃ遅れてきてそれを今晩私たちが見れるなんて怖すぎる。

でも星は綺麗から好きなんですけど〜。

 

寝なきゃ。

おやすま