フルーツ【8/31】

 

 

 

ね〜ね〜、みんなは何のフルーツがいちばん好き〜??

 

私はさいきんめっきりバナナ。

皮を剥き、お皿にのせてフォークで食べるのが好き。

スイーツを想起させるもったりした食感、少し青臭い匂い、フォークで少しずつ切り分けて食べるときの満足感。

これを食べればお腹に溜まるという信頼も、ゆるゆるダイエット中の私にはポジティブなポイントだ。

味が好き、というよりは総合点が高い、という方向で好き。

ダイエット中、大事なのは、しっかり甘いか(あるいはしっかり辛いか)、食べ応えがあるか、なのであり、味の詳細や繊細なところなんて、しょうじき言って二の次なのだ。

とはいえ美味しく食べる。

 

あるいは、ドライマンゴー。

頼りがいがある。

ダイエット中だと断っておきながら、お砂糖でべたべたにコーティングされた、はんぶんお菓子に身を売った食べ物の話をしてごめんなさい。

でも、歯で引きちぎるようにして食べるときの、「私はものを食べているんだ」というある種ワイルドな気持ちとか、ぺなっと削るようにカットされたあの形状の親しみやすさとか、水分を完全には抜かれていないふくよかで肉厚な重さとかが好きだ。そして食べると満足感がある。

なにより生のマンゴーは、水分に少しの生臭さを感じてしまうので、比較してもやっぱりドライマンゴーを愛している。

美味しいマンゴー食べたことないんでしょ、って言うのはなし。それはそう。でも、美味しいマンゴーなんて滅多に食べられるもんじゃないでしょ!それにお腹にたまらへんし!!

 

 

などと非常に実用的な面でばかり、好きな果物の話をしたけど、ほんとうに好きなのは桃。

桃とか、さくらんぼ。みかんやオレンジ、ゴールデンキウイ。苺もぶどうも大好き、でもやっぱりいちばんは桃。カナダで食べた小ぶりで皮ごと食べられる桃・ネクタリンは安くて甘くて大量に売ってて、大好きだった。

 

とにかくもう、かぶりつくと口の周りがべたべたになり、タンクトップで、いっそ裸で、食べるしか解決策なし、みたいな果物がほんとは大好き。

奇跡みたいに瑞々しくてほとんどが水分、ジューシーで食べた気がしないくらい無害の、純真無垢な。

生まれたての少女みたいな。甘すぎない綿菓子みたいな。だからちょっと矛盾を含む。

顔だけでなく全身べたべたにして、果汁をすすって貪って、種のぎりぎりまで食べ尽くして、指まで舐めて、はあ、フルーツというのはなんと官能的なんでしょうか。

ほとんど架空の食べものみたい。

実体がないみたい。

 

 

ああ、

ああ、桃。

夏がくる、桃の盛り。

あのふわふわした毛に包まれた、かわいい魅惑のぴんくいろ、ああ、今年はいつ食べられるだろう。

熟した桃の薄い皮はすぐにはらりととれてしまう、表面にさえ果汁を滲ませた果実は苦労なくすぐに現れる、ああ。あの匂い、鼻腔を満たして離れていかない、ほとんど媚びたように甘い、跪くような柔らかな桃の匂い。

ああ。

だめだめ、官能的すぎる。

禁欲的な生活を半分望んで半分不本意に、送っている私には刺激的すぎる。

 

 

だから私は、私の現実では、バナナをフォークでちまちま食べてなんとかお腹いっぱいにさせようとするし、

お昼の後だけ食べるドライマンゴーの、乾いた確かさに安心するし、

ドライアップルをしゃくしゃく言わせてぱくぱく食べてやっぱりお腹いっぱいにさせようとする。

ほんとは夏だし、桃をたらふく食べたいけれども、糖分が高すぎるし、値段も高すぎるし、お腹ふくれないし我慢。

 

果物は危険。

蠱惑的すぎ!だからみんなも、食べるときには注意をするんだよ。

私は桃を食べる想像をしただけでとても切なくなりました。