積乱雲のもくもくい日に

 

 

休日である。

昨日からどちらかに行こうと決めていた。

ミイラ展(南港)か、食虫植物展(鶴見緑地)か。

 

体のサイクル的に、今日が早く起きられない日なのは分かっていた。

南港は遠い。

加えて、ミイラ。

 

ミイラって、つまり死体だ。

私はこの夏、死について考えることにしていた。考えるべきときだと思ったからだ。

しかしそれは、ひとりで行く予定だった沖縄で、海を見ながら、である。

エネルギーに満ち溢れた南の島で、波の音に抱かれながらそれをするつもりだった。

けっきょくは自らの、家族の、他人の生命を間接的にでも危険に晒すような行動は慎もうということで、飛行機チケット代はドブに捨ててしまったが……。

だからそう、死について考えるというこの夏のテーマは、まだ、果たされていないのだ。そこでミイラ。

 

でも……。

もしひとりでミイラのいる部屋に入ったとして、私は出てこられるんだろうか。

ナイトミュージアム的な意味ではなく。

死骸に、ひとりで囲まれて。

蝶ならぎりぎり耐えられそうなものだ、蝶の死骸なら。哺乳類の剥製となるとちょっとだいぶ厳しい。というよりも大きな犬が走り寄ってくるだけで怖い。

他の生命、生きている状態でもかなり恐ろしいそれの、さらに生命を終えたあとの亡骸を、直視できる自信が、よく考えたらなかった。

 

それで食虫植物展。

17時閉館、16時20分入場。無念の滞在時間40分。

 

夏休みの子どもたちに囲まれながら眺めた食虫植物は、じつに奇妙だった。

形状は好きだ。なめらかなカーブ、かわいらしく誂らえた蓋のような葉。

あるいは、笑っているように噛み合ったとげとげの葉の重なり。

ぐるぐると絡まっていく蔓。

ねばねばであるらしい茎。

大量のツボ。ウツボット……。

 

しかしもっていちばん奇妙なのはルックスではなかった。

彼らが根っこを持っているということだ。根っこから養分を摂取できるという点だ。

説明書きには、「痩せ地で養分を確保するために虫を捕りますが、生きるのに必要というわけではありません。虫は人間でいうおやつのようなものです。」とあった。

 

おやつ?

 

私はまじでマスクのしたで何度も呟いてしまった。

 

おやつ? おやつ? ……おやつ?

 

余分なもののためになんらかの努力、進化、を遂げるなんて人間じゃないか。

思考しているじゃないか。

怖すぎる。おやつ? おやつを食べる植物なんて植物じゃないだろ。

 

そしてあのツボのやつのやつの、生る場所も怖すぎる。

根があり、茎があり、葉があり、その葉の先がにょーんとちょうど飴細工のはじめの一手のように伸びていて、そしてそこに不自然な大きさでどんと、あのツボである。

はあ?

意味がわからへん。

いかにも後付けの構造、意味がわからへん。誰かが意図的にあとからつけたとしか思われへん。

だってあんな凝った形状。虫が滑り落ちるための、いかにも努力された形状。おかしすぎる。

意匠が凝らされすぎている。ネイチャーを馬鹿にするつもりはなく、花はとても好きで、大きな木も好きで、だから敵意は私サイドにはまったくない、でも、でもでも凝りすぎやろ。

明らかに誰かが頑張って考えてつくったやろ。

 

なんというか、食虫植物コーナーは、広場の噴水の周り、円周にぐるりと設けられていたわけだが

2周半して、睨み倒しても彼らの存在は私にフレンドリーにはならなかった。

なんか一株に対してツボが多すぎるし、人間にしたら後付けの胃を身体の外にエクストラでつけているようなものなのだ、と思ったら不気味でしかなかった。

 

そして昔、流行った『怪談レストランシリーズ』という子ども向け小説の、うちの一冊、『人喰い花レストラン』を思い出して怖くなった。

人間まるごと、入ってしまえるような大きさの、ウツボカズラ…………ぞっ

 

どっちにしろ怖くなりデイだったのかもしれない。

ミイラは、亡骸へのリスペクトに溢れている。清められ、処理され、保存されている。

食虫植物は、余剰分のために生命を奪う。しかもじわじわじわと。

なんというか、後者のほうが冷徹で、そして今の人間ぽいな。

 

 

よかったのは、大好きで今年ぜったい見に行くつもりだったのに機会を逃してた睡蓮を見られたことと、

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睡蓮と同じくらい大好きなアオイ科の花々をたくさん見られたことだ。

 

つぎはもっと早くに行こう。

咲くやこの花館。

いい感じの場所だった。

高山植物コーナーは冷房が効いていたし。

 

私は嫌いな人間でもウツボカズラには入れたくないな。

同調してしまってこっちがしんどくなってしまうから、一瞬で死んで欲しい。

やっぱり誰かを苦しめられる人間というのは特別らしい。

 

 

ねむっ

 

 

 

 

 

 

追記

帰りに寄ったイオンで カバンにつけた(ものをすぐ失くすのでチャリキーに安全ピンつけてあらゆるところに刺してる)チャリキーがなくなってたので 絶望してたら カバンの中にミラクル!チャリキー入っててめちゃくちゃラッキーるんるんだったし

GAPで鬼可愛いTシャツがセールプラス会員料金で1700円になってて最高やったし

欲しい色のアイシャドウとアイブロウ買えたし

チャリのタイヤにやっと空気を入れられたし

満点の日だった☺️