大坂【11/31】

 

 

東京で生まれて東京で育った人にとって、この世は東京とそれ以外にわけられるだろう。

大阪で生まれて大阪で育った人には、大阪と大阪以外。

博多も、名古屋も、札幌も、東京以外の地方都市、それぞれ特色がある。

 

でも、東京がどうして、他の都市とまったく違うかって、圧倒的に広い。

土地としても広いし、土地が広ければ、コミュニティの幅も広い。

渋谷を拠点とする人と、銀座を拠点とする人とでは、まったく属するコミュニティが違う(たぶん、東京のことはほんまに、わからん)。少し居場所をずらせば、誰にでもなれるし誰とでも会える。どんな人もいるし、どんな人がいても誰も気にしないんだろう。

他人同士という礼儀。

それがときには冷たい街という形をとって人の目にうつるんだろう。とくに、地方から旅行で数日間滞在する人には、東京はあまりにも優しくない。かもしれない。

しかし住んで、自らの持つ特色をもとに、共通点を持つ人のコミュニティを探せば、所属は可能なのだ。東京という街に。たぶん。

そして、自らの働きかけによってのみ、所属というのは可能なのだ。

他の地方都市と違って。

私たちには選択肢って、あまりない。

どこかの誰かと繋がれば、その周辺とその周辺くらいで、壁に行き着く。誰もが誰かの知り合いで、それは、なにも田舎町だけじゃない。地方都市のぜんぶにいえることだ。私たちにはキタとミナミしか基本、ない。それぞれはゆるく分断されているが、でも、完全に繋がっている。

そもそも方言というのが悪だ。なんて排他的なんだろう。言語統制だ。私たちは大阪弁を話さない人に、初対面でやすやすと「どこの人?」と訊く。なんてデリカシーがないんだろう。でも、訊く側も訊かれる側も、それが越権行為だとは考えない。ここは大阪で、大阪弁を話さない人は、よその人。

東京でそんなことがあるだろうか?

そりゃ、私みたいにどこでもかんでも大阪弁で話せば、「関西の方ですか?😅」という質問は当然飛んでくる。でも、私はツーリストなので関係ない。住人たちは、どこの出身であれ東京弁を使う。標準語と呼ばれる言語を。

それは鎧で、盾で、それ越しにはじめはみんなコミュニケーションをとることができる。自分の言語でなにを考えても、外に出さずに済むのだ。

私の好きな芸人、Aマッソは、こてこての関西弁で話すけれど早くから東京に行ってしまった。芸人の活動というのは大阪or東京で、たいがいが大阪→売れる→東京なのだが、彼女らは売れるより遥かに前に上京した。

 大阪いてくれたらいいのに、と思いつつ、その方がいいんやろうな、とも思う。

大阪のお笑いはあんまりにも男性社会で、女性は特別枠にずっと入っている。「女性枠」がいくつか設けられているに過ぎない。吉本一強の図と、似ている。男性一強、しかも昔ながらの大阪弁で男臭い酒タバコ大好きな漫才師がいちばん強い。未だに。この世の中で、未だに。

芸人以外の人たちにもそれはいえるだろう。おもろいやつ強いのは、一般人でも同じことだ。

あんまりにも言語が地域に根ざしているので、排他的で、進歩が遠いのだろう。

だから大阪にいると息ができない人もたくさんいるだろう、と思う。奈良出身なんですけどね。