酔ったときの口約束は美しい。
それは、愛してるや一生一緒にいようねと、まったく同じ性質のものだからだ。
あなたが誰かとお酒を飲んだとき、あんまりにも楽しくて、お酒を飲むだけじゃあもったいないと感じる。
夕暮れから合流し、美味しいものを一緒に食べて、お酒を飲んで、話をして、大満足だけれど、それ以上を共有できたならもっと素敵なのにと感じる。
たとえばなにか同じ夢をみる、映画を観たり綺麗な景色をみる。
たとえばなにか同じ汗をかく、走りに行ったりスポーツしたり、同じ経験をする。
たとえばエネルギーを必要とする一日の終わりに、すべての楽しい出来事のまとめに、やっぱり一緒にご飯を食べてお酒を飲んで語り合う。
それらぜんぶを共有できたならどんなにかいいかしらと考え、酔ったあなたは軽率に口にする。
酔った相手は軽率に口にする。
酔ったあなたは嬉しくなって快諾する。
酔った相手は楽しくなってその計画を膨らませる。
じっさいに後日、それが実行に移されるかは、
映画を観るかドライブに行くかケーキを食べるか花畑を歩くか、そんなことは、まったく、問題ではないのだ。
だからこそそれは切実で、刹那的で、無責任に美しい。
愛の言葉と同じで。
一生一緒にいようねに保証や領収書なんて要らない。愛してるに担保は要らない。
一瞬、強く輝き、その光の影が鮮烈に心に焼き付けられる。力強いが"それだけ"の。
ほとんど幻の、不確かなのに異様に確かで永遠の言葉たち。
そういうものが、好きでございます。