実践【18/31】

 

 

男の足が沈み込んだ。

編み上げの、くるぶしまである靴越しにも砂は温かい。足元が柔らかく崩れ、丘を砂が舞い落ちていく。命を持っているように、地面のすれすれを戯れながら。

腿を大きく上げ、一歩一歩に力を込めて進む。そうしないと、簡単にその場から動けなくなってしまいそうだった。

周りを見渡しても、近くの砂丘以外にはなにも見えない。近くの砂丘がじっさいに近くにあるのか、歩いて一時間もかかるのかさえ、わからなかった。すべてが同じもの、物質でできているので、遠近感は簡単に狂ってしまう。

顔の周りにぐるぐると布を巻き付けていても、太陽の光が強く、熱いのが皮膚でわかった。汗が頭皮から吹き出し、背中をいく筋も流れるのに、腰に提げた水筒の中身は減っていくばかりで、水はもう三分の一ほどしか入っていない。

あと一歩で街に着く。あと一歩で視界が開ける。あと一歩で川に出会える。

一歩ごとへの多大な期待は、一歩ごとに裏切られ、また新たな希望を持ち、それは次の一秒で潰える。

 

男は砂漠の奥の、岩石地帯に設けられた潜伏場所から逃げてきたのだった。

そこには水があり、生鮮食品は少なかったが、チップスやコーラもあった。発電機で冷蔵庫が使えたし、三日に一度はシャワーも使えた。

代わりに銃があり、弾薬があって数台のドローン兵器もあるというだけだった。近くの村から連れてこられた女がいて、酒があって、そして、政治的思想があるだけだった。

気温が下がって比較的過ごしやすいので、男たちは夜に行動した。近くの村に行くのも、どこかから武器類が運ばれるのも、夜だった。それで男は夜明けを待って抜け出すことにした。擦り切れたリュックに、数日間生き延びるための缶詰と水、役に立たない衛生写真と少しの現金だけを詰めて。荷物が多かったり準備に時間がかかったりすると怪しまれるのし、砂漠を歩くのは大変だと思われたから、身軽でいるに越したことはない。スマートフォンや衛星電話なんて持たされていなかった。ただ男には、もっと若いときの判断を、覆しやり直せるだけの若さがあった。

 

 

 

 

………情景描写、実践しようと思ったけど、難しいし、逸れるし、苦しいよ〜!!

砂漠なんて行ったことないし!!ぷ〜〜〜〜んだ!!!