ダブヒガ

 

 

ダブルヒガシという大阪芸人がいる。

コロナ禍前には頻繁に劇場通いをしていたこともあり、彼らが長いこと劇場に出ていることを私は知っていた。

知っていたけどもやっぱり、メンズライクなメンズが好きな私は、見取り図の盛山であったり、令和喜多みな実の野村であったり、そっちばかり見ていた。

派手で、個性的で華がある。ひとりでもおもしろくて堂々としてかっこいい。

 

しかし観るべきである、今回のM-1の3回戦の、ダブルヒガシの漫才!

コント漫才と言われる形式で展開されるそれはめちゃくちゃおもしろかった!

10/24 [大阪] 牛ぺぺ/ダブルヒガシ/タイムキーパー【3回戦全ネタ】 - YouTube

なんでこんなにおもしろかったのかというと、私がさいきんずっと、ダブルヒガシのラジオ「はちくちダブルヒガシ」を聴いているからだ、というのが、まず第一にある。

ポッドキャストで配信されているそれは、地元のツレであるふたりのやりとりが、聴いててめっちゃくちゃ楽しい!

‎Apple Podcast内のはちくちダブルヒガシ

ダブルヒガシのひとつのヒガシ:大東のひねくれた物の見方とベイビーっぽい喋り方、

もうひとつのヒガシ:東のまっすぐで地元っぽい喋り方、どっちも大阪色がコテコテでスピーディーで、話題なんて関係なくおもしろい。

高校の教室で男の子が喋ってるのを、近くの席で聴いている感じ。その会話に私は入れないけれど、聴いて一緒になって笑ってしまう、ときにお下品な話題に、顔を顰めながらふふふとこぼれてしまう、ような感じ。

げんに話の内容は、収録場所の神戸に喫煙所がないこと、おもしろい風俗に行ったこと、バイオハザードが好きすぎること、セレッソとガンバの話、などとにかく男の子っぽくて、トピックの幅は狭い。それでも、知らない題材であっても、ふたりが話すとおもしろいのだ。私(リスナー)はふたりの会話に入れはしないが、置いていかれもしない。

加えて、ふたりはすぐにふたりだけの言葉をつくってしまう。ものを略したり茶化して呼んだりあだ名をつけたり、とにかくその空間でのみ通じる固有の言葉をつくる。例を出したいけどほんとうに意味がわからないと思うので、できない。「ベロガクト」とか「エグゼクティブK」とか、とにかくその場のノリでできた言葉たちをふざけてきゃっきゃっ言いながら使うので、それもやっぱり輪に入れてもらえてるような錯覚をリスナーに起こさせるのだろう。

 

そしてたぶんそれらの、ラジオで発揮されている魅力が、今回のM-1予選で遺憾無く発揮されていると私は感じた。

ふたりの仲良しな空気感が一発で伝わるし、大東のムカシ大阪芸人感のある喋り方だってちょっといいし、東のノリの良さは楽しいし、耳に残るキーワードが何個も出てきておもしろいし、やっぱりふたりでおふざけしてる感じが思わずこちらも笑わざるを得なくさせる。

本人たちもラジオで「今年はいける」「勢いがある」と言っているように、生き生きしつつ堂々としてて、やっぱり立ち姿がかっこいい!

 

 

と、かっこいいと思うのはやっぱり、大東のムカシ大阪芸人感が"ちょっといい"からでもある。

大東がラジオで、高校生のリスナーから、好きで好きでたまりませんというメールをもらった回がある。

それを受けて大東は「おーほな"かいたる"わ」と言うのである。

そんな言葉いまどき、高校生がわかるはずない。私の世代でもわからないんじゃないか。要するにfuckしたるわ、という意味だ。"かく"というのは寝るという意味の動詞だ。そしてそういう動詞は昔、男のみが主語に置けた。

そういう古の言葉をぽんと使えるところ、好きと言われてそういう風に返しちゃうなんかちょっとかっこつけてるところ、が、やっぱり"ちょっといい"のだ。だから笑っちゃう。"ちょっといい"人の言うことなんてほとんどおもしろい。

性別関係なく、人は好もしい人の言葉に笑う。笑うということは心を許すということだからだ。