手遅れ

 

 

 

ここまで生きてきてようやく気づいたのだけれども、「おもしろい」というのは危険な感情だ。

なにもかもの始まりだ。

それは興味で、お気に入りスタンプで、目で追う理由で、そして、その先の、なににおいても理由になる。

触れたいと思わなくても、キスしたいと思わなくても、なにもかもを見たいと、暴きたいと思わなくても、強い感情を抱かなくても、「おもしろい」はただそれだけで、その先に進む理由になるのだ。

 

まあとにかく、楽しいとか嬉しいとか、自分に感じて発生する内的な感情はどうでもいいのだ。

おもしろい、というのはほとんど感想だ。他人に対する、いっけん無責任な、ぽんと独立した感想。

だから危険なのだ。誰かになにかを感じた時点でそれはもうなににでもなり得る。

あなたとその対象はたぶんどこまででもいける、あなたがおもしろいと思うということは、向こうだってあなたに好意的な印象を抱いているのだから。

 

だから「おもしろい」には気をつけて。

あなたが思わず笑ってしまうようなことを言う人には気をつけて。

もう懐柔されているのだ。すでに。