心に

 

 

 

魔法が、女の子にしか使えないのはどうしてなんだろう。

 

女の子の視線に魔力が宿るのは、たぶん、江戸時代の幽霊に女しかいなかったのとちょっと関係があると思う。

男の人が実際的で現実的なぶん、地面がそういったもので支配されてしまっているぶん、たぶん女は少し浮かなければいけないのだと思う。宙に。

 

私は抱きしめる。信じられないほど熱くて芯のある体温ごと、汗の匂いや硬い髪、わけのわからないほど異質な身体を。

触れて初めてわかる違いにほっとするのだ、男、なんて、きゅうくつな性別に生まれていない自分に、柔らかな脂肪で核心を隠す安心に、少しずるい、不感症のこころ、精いっぱいなにも感じないでいようと、感じないようにしながらなにかをそれでも受信してしまいそうになる、けど、違う生物の、考えることなんてわかるわけないと、空からふわふわつむじを俯瞰して。

 

じっさい男という生き物の機構ほどグロテスクなものはないし女の体臭、私は女の体臭にはもうほんとうに我慢がならない。吐きそうになる。

 

私はちょっと呪いが使える。

人を憎むこともできるし心から嫌悪することもできる、そういう、強い負の感情は、なんらかの作用を起こすものだ。

同様に女の子には魔法が使えて呪いだって使えるはずだ。呪いはかわいくないし怖いからみんな秘密にしてるだけ。私たちはみんな平等に人を、とくに男を、呪うことができる。

 

精神、ソウル、心同士身体抜き、で恋愛するなんて狂気の沙汰だ。

なににってすべてが肉体に宿るのに。プラトニックラブがいちばん気色悪い。射精できずに逃げ場をなくしてただ金玉のなかで腐る精子みたいにくさそう。

ごめんね、ノーオフェンス、誰かを傷つけたいわけではないのだけど、身体で恋をしないならもうメタバースに行けばいいと思ってしまう。

肉体で眠り続けて脳みそだけぎょろぎょろ動く崇高な夢のなかで誰かというそれぞれ名前の自分と生きていく、のは、なんだか、耳に心地よい、優しいランデブー。

 

切って血の出る肉体を捨てれば傷つかずにすむんだろうか。

失恋はもうこんなに、涙がでるほどは痛くなくなるだろうか。

痛みを知らなければ痛みは痛くないだろう。悪いのはだからやっぱり精神ではなく肉体なのだ。